◇仕事欲しい…最低価格で横並び
奈良県で開催中の平城遷都1300年祭で、メーン会場となる平城宮跡(奈良市)に建設するテナント施設などの工事計6件(落札総額15億6400万円)の落札業者がすべてくじ引きで決まっていたことが分かった。下回ると落札できない「調査基準比較価格」が事前公表され、同額の入札が相次いだことが原因。公共工事が削減される中、採算を度外視しても落札したいという業者の意向があったとみられる。
4月24日からメーン会場でのイベントが始まるのに向け、土産物店や飲食店などが入る施設など約50棟を建設する計画で、昨年7〜10月、平城遷都1300年記念事業協会が6件の工事を発注した。
一般競争入札で、予定価格は約1億1200万〜約7億700万円。それぞれ地元大手(共同企業体含む)を中心に4〜10社が参加した。しかし、予定価格の81〜90%に設定され県発注工事の最低制限価格にあたる「調査基準比較価格」と同額の入札が各2〜9件あったため、くじ引きで落札業者を決めた。
その結果、落札価格は予定価格より総額約2億2000万円低くなり、事業協会の担当者は「品質を管理しながら、安く仕上げてもらえるのでありがたい」と歓迎している。
同県では、08年に入札価格を業者に漏らしたとして、県職員が競売入札妨害容疑で逮捕されたのをきっかけに、予定価格と最低制限価格を事前公表している。今回、協会もこれに準じて公表した。
県発注工事は05年度の約750億円から09年度は約530億円に減少。入札に参加した建設業者は「公共工事が減り、1300年祭は県内では比較的規模の大きい工事の一つ。赤字覚悟で札を入れた」と話した。一方、くじ引きで外れたある業者は「技術力の勝負にならず、運だけで決まるのはおかしなやり方だ」と批判している。【阿部亮介】
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